皮膚と地図
「皮膚と地図-4名のアーティストによる身体と知覚への試み」
「皮膚と地図Ⅱ−記憶と時間への近づき方」
企画展覧会の情報を掲載しています。

2011年5月7日土曜日

開催決定! 皮膚と地図Ⅱ -記憶と時間への近づき方

皮膚と地図Ⅱ  ー記憶と時間への近づき方


「皮膚」は身体の感覚を「地図」は論理的思考を表しています。

この二つの言葉が複雑に絡まって生成されている作品に出会ったときの体感がテーマの核となっています。

それは内側からも外側からも形づくられる「皮膚」の柔軟さや、今まさに創られている途中のルール無視の「地図」、そういうものが含まれる作品に出会う感覚に近いかもしれません。

※本展は2010年8月に開催した「皮膚と地図 4名のアーティストによる身体と知覚への試み」の第2弾として企画しました。


アーティスト

利部志穂 白木麻子 村上郁 DIG&BURY  TOLTA


企画

水田紗弥子


会期:527日(金)~68日(水)※木曜休廊

時間:12:00~20:00(最終日~17:00)


5月27日 金曜日 18:00-20:00 オープニングパーティ

6月3日 金曜日 18:00-20:00 クロージングパーティ

ささやかに開催します、皆様のお越しをお待ちしております。



会場:新宿眼科画廊

〒160-0022 東京都新宿区新宿5-18-11 /TEL:03-5285-8822


利部志穂


利部志穂(かがぶ しほ)

利部志穂の作品のテーマの一つは記憶です。既成の物を組み合わせてインスタレーションをする彼女の作品は、物から発動する触感や形の面白さが自身の記憶と結びつき、さらに記憶から離れて物に収束していきます。生成される記憶のダイナミズムそのものが彼女の作り出す空間です。鑑賞者は過去にあった記憶が、現在との関係によって常に変化していく過程に触れられるのです。



経歴

1981
神奈川県川崎市生
2004文化女子大学 立体造形コース 卒業
2005多摩美術大学 美術学部 彫刻学科 研究生
2007多摩美術大学大学院 美術研究科  彫刻専攻 修了
個展
2006掻く公転 (space 1/3、東京)
スーパーマーケットドローイング(スーパーAlpus、東京)
2007フォント ~で日を見る(なびす画廊、東京)
家を持ち替える(旧作家住居の解体場所、神奈川)
2008家を持ち替える(企画:鷹見明彦、表参道画廊、東京)
新世代への視点-画廊からの発言(主催:東京現代美術画廊会議/なびす画廊、東京)
2009ENTRANS FIELD-耕せる民-(なびす画廊、東京)
serendipity 妙のとき(企画:森啓輔「彫刻、何処でもない場所のカケラ」vol.2,switch point、東京)
2010返る 見る 彼は、川を渡り、仕事へ向かう(府中市美術館 公開制作51)(府中市美術館、東京)
2011こい、来る う とき (Art Center Ongoing、東京)
グループ展
2004八王子市・多摩美術大学共催 多摩美術大学彫刻展 (いちょうホール、東京)
PLASTICARTEXHIBITION(多摩美術大学内 彫刻棟ギャラリー、東京)
卒業・修了制作展(多摩美術大学学内塑像棟、東京) 
2005動物公園美術展 どうぶつ立体図鑑 (東京都多摩動物公園、東京) 途中撤去
絵画・彫刻 立体合同展 (多摩美術大学絵画北棟ギャラリー、東京)
GARDENS <石井厚生・建畠 晢 氏による合同企画>(多摩美術大学学内彫刻棟 ギャラリー、東京)
Department SCULPTURE 2005(多摩美術大学内 彫刻棟ギャラリー、東京)
2006横浜の森美術展 (横浜の森公園予定地、神奈川)
重たいこと <建築大室佑介・彫刻利部志穂 2人展>(多摩美術大学学内彫刻棟 ギャラリー、東京)
GARDENS 放射状の視点 (イイオギャラリー、東京)
ARTPROGRAM IN 青梅 緑化する感覚 次世代の作家たちの変革(青梅市街、東京)
2007卒業・修了制作展 (学内諸材料棟)、五美術大学 卒業修了展 (東京都美術館)
Artist in Studio2007 5-6月期オープンプログラム(BANKART NYK、神奈川)
甑島でつくる。(鹿児島)
アンデポンタン展(和光大学構内・神奈川)
2008サスティナブルアートプロジェクト[事の縁](主催:東京芸術大学・台東区,旧坂本小学校・東京)
2009DE MYSTICA第2回展-"アート"全盛期における"美術"(なびす画廊,東京)
第1回所沢ビエンナーレ美術展「引込線」(西武鉄道旧所沢車両工場,埼玉)
2010VOCA展2010(上野の森美術館,東京)
data and vision (AKI Gallery,台北,台湾)
[back to the drawing board]”もう一度始めから再構築する”(geh8 Kunstraum und Ateliers e.V.,ドレスデン,ドイツ)
[脱臼](island,柏,千葉)
[エマージング・ディレクターズアートフェア「ウルトラ」003]-ブース:結城加代子,island,千葉-(スパイラル,東京)
2011[発信//板橋//2011 けしきをいきる] (板橋区立美術館,東京)
[レディース・エンド・ジェントルメン] (シャトー小金井,東京)
第8回展覧会 [せいめいのれきし] -キュレーション:利部志穂 (アキバタマビ21,東京)
ワークショップ
2006子供とまつり (越後妻有アートトリエンナーレ 新潟)
2009第1回所沢ビエンナーレ美術展「引込線」(西武鉄道旧所沢車両工場,埼玉)

村上郁


村上郁(むらかみ かおる)

自分ではない他者の記憶と共に作品を広げていく村上郁の作品は、時間と空間を自由に行き来しています。知らない人が手にとっていた古いポストカードから現在や未来をも回想し、スナップショットを撮るように、想像の場所や、会ったことの無い人を彼女の世界に瞬時に取り込むのです。そしてその作品の、事実か定かではない捏造された架空の記憶に懐かしさを感じます。



経歴

1981 東京生まれ

2004 多摩美術大学美術学部絵画学科版画専攻卒業

2008  BA(Hons) Fine Art, Central Saint Martins Collage卒業

個展

2009 「共依存的、見えない都市」GalleryQ、東京

2010 「最期の絵はがきがポストに向かう」Loop Hole、東京

●おもなグループ展

2006 「Off Sight Workshop ProjectTrinity Buoy Wharf, ロンドン

2007 The uncanny lightsMy life in art, ロンドン

2008 Salon Locale 08gallery:space, ロンドン

    「P&E 2008ARTCOURT GALLERY, 大阪

    「群馬青年ビエンナーレ」群馬県立美術館、 群馬

    「Other Asias - InFormationNolias Gallery、ロンドン

2009 「The Heartwarming展」GalleryQ、東京

2010 「Chocolate Del Toro FucyuLoop Hole、東京

    「TAMA VIVANTⅡ」多摩美術大学ほか、東京

●アウォード

2007 「CELESTE ART PRIZE」油画 入選

2008 「群馬青年ビエンナーレ08」立体 入選


白木麻子

体温と同じ

Pocket Pocket 左 2009年

W1300×D150×H1210mm

W1300×D150×H1210mm

ナラ 


白木麻子(しろき あさこ)


白木麻子の作品は日用品や古道具のようにも見えますが、身体に寄り添うようなポケットの裏側やくり抜かれた襟などのモチーフが登場します。自分が空になって、物の実態に触れようとしている謙虚さに惹かれます。素材をコントロールも克服もできないことを知っていて、だからこそ作品の過程と共に静かに現実に引き戻すような彫刻作品です。


経歴

1979 東京都出身

2003 東京藝術大学美術学部工芸科彫金専攻卒業

2005 東京藝術大学大学院美術研究科修士課程木工芸専攻修了

2008 東京藝術大学大学院美術研究科後期博士課程修了

現在 東京藝術大学大学院美術研究科非常勤講師 千葉大学非常勤講師

主な活動歴

グループ展

2011 39ART ネズミ講展 directed by 開発好明」RED CUBE Project Room、東京

2011 「ひととき」旧神谷伝兵衛別荘、千葉市美術館、千葉

2010 2010 Asia Art FairnaleHASLLA ART WORLD PROJECT、韓国

2010 「東京アートミーティング トランスフォーメーション 東京藝大トランスWEEKS」東京藝術大学石膏室、東京

2010 「臨時現代美術館」旧布川小学校、茨城

2010 「画廊からの発言 '10 小品展」ギャラリーなつかb.p、東京

2010 Toyota Art Competition とよた美術展2010」豊田市美術館、愛知

2009 「中之条ビエンナーレ 2009」中之条旧第三小学校、群馬

個展

2009 「ここそこの間 between here and thereSAN-AI GALLERY +contemporary art、東京

2007 「ゆらぎの風景 透明な複合体」GALLERY HANA、東京

受賞

2005 サロン・ド・プランタン賞 東京藝術大学

白木麻子ウェブサイト 

DIG&BURY




DIG & BURY

DIG&BURYは恐怖めいたものへ軽く薄く近づきながら制作をしています。恐山に行きイタコに出会い、竹島を自分の目で確かめにいき、ミャンマーのサイクロンに偶然出会う、そういう彼らの方法と歩み方は子どものように都市や街を歩き、怖いものに目印をつけるように軽くてたどたどしい。俗っぽい態度で恐怖に向き合う作品への否定の気持ちと共に、メディアを通して恐怖に慣れてしまった私たちの姿勢そのものを反省しつつ現実に向き合う契機になる、そういう作品です。


DIG&BURY ウェブサイト



TOLTA

「ジャイアントフィールド・ジャイアントロール」
"GIANTFIELD GIANTROOL"
制作年 2009年
作品サイズ外枠300×300×600、内部の巻物:288×54000mm
素材 パイン集成材、紙、鋳鉄



TOLTA(トルタ)


シンプルな行為の繰り返しによって、複雑に絡まった道筋が立ち現われてくるような方法で詩の制作をしています。人の言葉から、雑誌の目次から、引用や既成の単語から再構成された風景が詩となって表れ、言葉そのものが自由に移動し伸縮している状況そのものを感じます。



プロフィール

現代詩や戯曲といった表現ジャンルを中心として、ことばと詩の未来を追及するヴァーバル・アート・ユニット。河野聡子、南谷奉良、山田亮太により20064月結成。百年後、そしてその先の未来に生き残るようなことばの創造と進化をめざし、「国語の教科書」形式での雑誌の発行や、全長100メートルの「本」の製作を通して書物のマテリアルな側面にフォーカスする作品などを発表するほか、パフォーマンス企画、ミュージシャンやダンサー、俳優とのコラボレーションも行っている。


発表作品に雑誌『TOLTA1』~『TOLTA4』、国語教科書のパロディ『トルタの国語』『トルタの国語 冒険の書』、アンソロジー詩誌『テキサス詩集』『ジャイアントフィールド・ジャイアントブック』、巻物本シリーズ『トルタロール』『ジャイアントフィールド・ジャイアントロール』『ワンハンドレッドメートルトルタ』等。イベント出演等に「アンユナイテッド・ネイションズ詩はどのように書かれるか」、日本近代文学館「絵本の世界に遊ぶ」(20096月)、首都大学東京現代詩センター「詩のいま、世界のいま」(20102月)、東京日仏学院「詩人たちの春」(20114月)、他。その他、執筆参加書籍に『〈建築〉としてのブックガイド』藤原ちから・辻本力編,明月堂書店(20112月)がある。


2010年9月27日月曜日

展覧会概要/企画意図 concept


このたび、あいちトリエンナーレ内の企画コンペで入選し、展覧会を行う機会をいただきました。

本展は論理的思考や視覚だけに頼らず、全感覚を使って展覧会を鑑賞してもらいたいという意図のもと企画しました。
企画のヒントは数学者の岡潔(おかきよし)のエッセイ(*)を読んでいたときに浮かんできました。岡は自転車に乗ってトンネルを抜け、それまで見えなかった海がパッと真下に見えた途端に数学の難問が解けたというエピソードを紹介し、身体感覚を通して難問を解く糸口が閃いたと書いています。人間の深い知恵は論理的な思考を行う心の働きからではなく、全体的な直感把握を行う心の働きの部分が司っているという事柄を、論理的思考を重視する数学者が解いているのが興味深く、同時に数学的な発見にも美術の創作の根底にもある感覚的な共通項に気付かされました。現代美術の複雑さや、技術や素材の不可解で多様な質に引きこまれ過ぎずに鑑賞して欲しい、そして視覚的な面白さに頼るだけでなく、岡潔のように自然に身を任せたときに、意識に切れ目ができて冴えた感覚が飛び出てくるような、そんな風に全体を直感的に把握しながら展覧会場を歩き回って欲しいというのが理想です。本展で紹介する4名のアーティストは、現実を捉える客観性と身体的な感覚をそれぞれのバランスで展開し続けています。

「皮膚と地図」が感覚や論理だけに偏っているのでもなく、表層や境界だけを意味しているのでもない、発展し拡がりのあるテーマだということを鑑賞者の皆様がそれぞれに見つけてくれたら幸いです。(*「春宵十夜」岡潔、光文社,1963)


I have been accepted to the Curatorial Exhibition Competition (Art
space) of Aichi Triennale 2010 and was given the chance to hold this
exhibition.

This exhibition was planned with the intention to have viewers use
their full senses, rather than having them merely rely on their
logical thinking or their visual senses.I came up with the idea of
this exhibition when I was reading an essay by a mathematician named
Kiyoshi Oka. Oka described in his essay his experience of how he was
able to solve a difficult math problem when he was riding his bicycle.
After he rode through a tunnel, the view of the sea suddenly came into
his eyes, and through this physical sense, Oka discovered a clue that
helped him solve the problem.
It was very interesting to see a mathematician, who emphasizes logical
thinking, noting how the deep wisdom of human beings are not
controlled by the logical mind but rather by the instinctiveness of
the heart. I also realized that senses lie a common denominator for
math findings and art creation.

I would like for you to look at the works without being too drawn in
by the complexity of contemporary art or by the mysterious and diverse
qualities of techniques and materials applied in the artworks. My goal
is to have viewers grasp instinctively the entirety of these works.
Rather than just relying on the visual sense, I would like for you to
walk around and experience what the mathmatician Oka has gone through
-- the feeling of a sharpened sense jumping out after leaving things
to mother nature. The four artists introduced here each have a unique
balance of objectivity, which goes beyond the reality, as well as
physical senses. It would be my great pleasure if you can discover
that the theme of "skin and map" continues to develop and expand. It
is not merely dependent on senses or logic, nor does it just indicate
surfaces or borders.

皮膚と地図 終了しました

展覧会は9月12日で無事終了いたしました。ご協力くださったみなさま、本当にありがとうございました。事務局から入場者数をいただいていないのですが、平日でも250名近くの方に見ていただいたようです。



撮影:城戸保

ちなみに、あいちトリエンナーレは10月31日まで開催しております。ひつまぶしも味噌煮込みうどんも美味ですのでぜひゆっくり巡ってください〜。

*ちなみに床に関するお問い合わせを結構いただいているのですが、事務局仕様ですのでなんともご返答しにくいです!もちろんなにかあればお気軽にどうぞ〜。

窪田美樹 芸術文化センター作品 Miki Kubota




窪田美樹 1975年 神奈川県生まれ・神奈川県在住
「光源」
彼女の作品は「紙を丸める」「埋める」などのシンプルな行程の繰り返しでできあがります。家具という量感のある物体の表面が印刷された紙になり、それがさらに丸められ、さらに組み合わされた家具に埋められることで物体に戻っていきます。今回は光源から発する光が自己の皮膚を照らし、自身と周囲の環境を一体化させるという新しい展開を見せます。形としては捉えられない「光」が物質化されることで、虚像と実像、表層と内側、そして自己と外部との関係がさらに複雑に現れてきます。

Miki Kubota, born in Kanagawa in 1975, currently residing in Kanagawa
"A Light source"
Kubota creates her works by repeating simple actions such as crumpling
up papers or burying things. The surface of an object -- a furniture
in this case -- is printed on a paper, which is then crumpled and
buried on a furniture put together and thus turning back into an
object. In this exhibition, the light illuminates the skin, which then
links the self and the external environment. By objectifying light,
which can not be grasped as a shape, ties between virtual and real,
surface and inner, and self and external come up complicatedly.

池崎拓也 芸術文化センター作品 Takuya Ikezaki







池崎拓也 1981年 鹿児島県徳之島生まれ 北京・東京在住
「目頭から流れる、空青し、山青し、海青し」
紙、ビニールテープ、布、針金など身近にある可塑的な素材を用いて展開される彼の作品は、海や山々、道路や空が一体となって風景のように立ち現れます。物事の裏と表や、始まりと終わりなど触覚と視覚の曖昧な境界や捉え難い感覚に対する疑問が彼の作品の根底にあります。光の粒子や、皺や襞など、視覚だけでは捉えられない質感は、個人の記憶、つまり時間や空間にも結びつき、彼の世界の地図が生成されます。

Takuya Ikezaki, born in Tokunoshima, Kagoshima in 1981, currently
residing in Beijing/Tokyo
"Blue Sky, Blue Mountain and Blue Sea falling from the Eyes"
Installation works of Takuya Ikezaki deal with elusive sensations or
awarenesses such as blinking lights showing up underneath closed
eyelids and crumpled fabrics by using cheap and daily materials. His
works, composed of common materials such as paper, plastic tapes,
clothes and wires, turn the sea, mountains, roads and sky into one
scenery. The sense of material that can not be grapsed just by
visions, such as light particles, wrinkles and pleats, link with
personal memories like time and space.